紀元前、砂漠の地ヒュステリオ大陸。百年にも渡る慢性的な戦争を続けていた砂漠の西側の国ティオポリスは、東の大国クォーツェンポリスから数年ぶりの宣戦布告を受け、迫り来る敵の部隊を待ち構えていた。『シヴィタス』と呼ばれる搭乗者のイメージを光波の形で具現化させる兵器が開発されてから初めての開戦であった。騎馬戦をはじめとした白兵戦から『シヴィタス』を用いた兵器戦へ戦争の形態が著しく変わったことで、ティオポリスの国民たちは今後、戦いがどのように進んでゆくのか、戦争終結への期待と、争いの形式の変化に対する不安で戸惑っていた。そんな中突如として一機の所属不明の『シヴィタス』がティオポリスを襲う。苦闘の末、ティオポリス将軍代理グラント・アンルーサが捕縛したその機体に載っていたのは、ティオポリスではなじみのない服を身にまとった年端も行かない少年だった。そして、その少年の胸には、数年前に失踪したティオポリスの将軍シーン・フロイド＝マーシュの徽章が輝いていた。尋問の際、少年は復讐心に目を血走らせながら言い放った。「俺の父はお前らのよく知っている、シーン・フロイド＝マーシュだ！」顔を青くしたグラント将軍の耳に更なる鋭い言葉が続く。「父さんを殺したのはお前たちだ！」失踪したシーン将軍を何年にも渡って必死に探し続けてきたグラント将軍代理にとっては、耳を疑うような言葉の連続だった。大陸の中央に流れるセベス大河に存在する、霧で覆われた霊山セベス、その未開の地セベスからやってきたという謎の少年エリオット、四年前にエリオットがティオポリス軍によって父を失うきっかけとなった『セベス掃討』、十二年前にヒュステリオ大陸を襲った大災害『白い風』事件、『シヴィタス』という兵器がなぜ生まれることになったのか、セベスという地はなぜ人を拒んでいるのか。多くの謎を秘めたヒュステリオ大陸の物語が、少年エリオット・シャン＝マーシュがティオポリスを襲ったことで、大きく動き始めることとなる。